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地獄行き

「太宰センセ」と彼の指が、服の上から私の腹筋をなぞる。私はヒュッと息を呑んだ。ゾットするほど厭らしい手つきだったからだ。
「先生は、地獄行きだぜ」
「何故?」
私が訊くと、彼は悪魔の微笑みを浮かべて私の首へ両腕をまわした。そうして、彼の呼吸が分かるほどに顔を近づけて「……はぁ、わかんねえのかよ。俺、気付いてンだぜ………手前が教師としてあるまじき男だってよォ」と囁いた。
彼の吐息に全身の毛を逆立て「アッ」と小さく喘いだ私は、大層な間抜けだっただろう。
彼は満足げに笑って「手前は浅ましい豚野郎さ」と言った。
一方の私は妖艶に微笑んで私を誘惑する彼にほの暗い喜びを覚えていた。
今、この男子生徒は、私を破滅させんとツタナイ知識を総動員し精一杯に厭らしく誘惑しているのだ。未だまっ平らな下半身を私の足にスリスリと擦り付け、震える手を叱咤し私の股間に触れる。
嗚呼、なんて滑稽なんだろう!
私は彼がここまで私を怨む理由(思い当たる節はゴマンとある)を考えながら、喜んで誘惑にノッた。
だって、私が破滅する時は、憐れなこの男子生徒だって破滅するのだ。二人で迎える破滅は、きっと、素敵だ!