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幼馴染、二人

 太宰治と中原中也は〇歳の頃からの付き合いだ。なんだったら母親同士仲が良かったので胎児の頃からの付き合いだ。四月に産まれた中原さんちの中也くんと六月に産まれた太宰さんちの治くんは、それはもう仲が良かったのだ。まるで双子のようね、と皆顔を綻ばせたものだった。

 さて、そんな双子のように二人にしか理解できない言語で喋ったり頬を齧ったり齧られたりしていた二人だが、二人には明確な力の差があった。
 気がついたら中原さんちの中也くんが太宰さんちの治くんに泣かされているのだ。先にちょっかいを出すのは中原さんちの中也くんなのだが、最終的に泣かされているのは中原さんちの中也くんなのだ。この前母親二人が見たときは太宰さんちの治くんが中原さんちの中也くんの右手を嬉しそうに頬張っており、中也くんは大泣きしていた。ちなみに中也くんが治くんの尻をぺちぺち叩いてキャッキャとはしゃいでいた数分後である。
 二人の母親は互いに謝り続け、ちょっとも目を離せない二人に疲労困憊した。

 それでも二人はすくすくと成長し、中原さんちの中也くんは十六で縦の成長を止め、太宰さんちの治くんは十六で精神の成長を止めた。

 そんな二人が十八になった現在では、仲睦まじく日々喧嘩をしながらシェアハウスしている。
「私たちは仲良くやってます。あの蛞蝓中也はまだ私に泣かされてますが、どMなので問題ありません」
「奴と俺のシェアハウスは問題しかないが今のところ大家に追い出されるようなやらかしはしてない。俺の精神安定の為に週に一回は糞青鯖野郎を殴ってるが嬉しそうにしてるから問題ない」
 それぞれがそれぞれの実家に送ったこんな巫山戯たメールを読んで、安心すればいいのか怒ればいいのか分からないまま「取り敢えず大丈夫そう」と無理矢理納得させ、彼らのシェアハウスもとい同居は続く。
 至って平和な日常であった。